沖縄にはなぜステーキ屋さんが多いのか?

観光スポットに行くと必ずと言ってよいほどステーキ屋があります。有名ホテルに行っても琉球料理の次にお勧めされるのがステーキ料理。ではなぜ沖縄はこれほどまでにステーキ屋が多いのでしょうか?

ステーキ

もともと沖縄に牛はいない

全国的に見てみると、牛の飼育が昔から盛んな地域ではステーキをよく食べることがあります。でも沖縄の歴史を見てみると、そうではないことがわかります。というよりも牛肉を「美味い食材」として食べる習慣がついたのはずいぶんと最近になってからのことです。

かつて琉球と呼ばれていた時代、牛肉は「占いのための供物」でしかありません。おいしい食材として特権階級の一部にふるまわれていたという記録はありませんし、どちらかというと好んでまで食べたい食材ではないという表現の方が多いです。

そもそも一般庶民にとって牛を食べるということは非常に特別な意味がありました。それに食育用として飼育されていたものではありませんから、よほどのことがない限り口にすることはありません。

逆に豚については比較的早い段階で家畜として飼育がはじまります。また豚にはものすごい魔力があると信じられていたので、魔よけとして大事にしていたとも言います。

と言うのも、豚の鳴き声には、恐ろしい魔物を追い払う強力な魔よけの力があると考えられていました。だからお葬式から帰って来た時には、夜中でも寝ている豚をたたき起こして鳴き声を聞いてから家に入っていったというくらいです。

だから「もともと牛の産地だったからステーキ屋さんが多い」ということは沖縄では当てはまりません。

輸入牛肉の関税が低かったことが、ステーキ屋が増えた原因だった?

沖縄は戦後アメリカの占領下におかれていたことがあります。また沖縄には数多くの米軍基地がそのまま残されており、本土と比べると様々な面で優遇されてきました。

中でも輸入品に対する関税は、本土よりもかなり優遇されていました。輸入品の中にはアメリカの食文化に欠かすことが出来ない牛肉も含まれています。在沖米軍兵やその関係者が多い沖縄では、アメリカンフードの代表ともいえる食材・牛肉の確保は欠かせません。こうしたこともあって沖縄だけは輸入牛肉に対する関税が本土と比べてかなり低く抑えられていました。

そうなると話は簡単です。ボリューム満点の輸入牛肉を安く手に入れられる上に沖縄観光の目玉になるステーキ屋は、単純に「儲かる」というわけです。

特に復帰前の沖縄に旅行するにはパスポートが必要です。「身近に体験できる外国旅行」と考えれば、初めて口にするステーキの味よりも「本場のアメリカ牛肉をステーキ店で食べた」という感動の方が大きくなります。

それにステーキ料理そのものを見ても、和食や琉球宮廷料理のように手の込んだ仕込みや難しい調理法など必要ありません。安くておいしい牛肉さえ手に入れば、よほどのことがない限り失敗しない料理です。だからこそ沖縄ではステーキ屋をオープンさせて一儲けしようという人が次々と出てきます。

さすがに今は沖縄であっても輸入牛肉に対する関税は本土とほぼ同じです。ですから「安く仕入れて高く売る」なんてことはできず、開業しても長く続かずすぐにやめてしまう店も増えています。

それでも「沖縄=アメリカンスタイルのステーキを安く食べることが出来る」というイメージは多くの観光客の中に根付いてしまっています。だからいろいろなお店が出ては消え、消えてはまた出るというのを繰り返しているのかもしれません。

老舗の称号「サインA」の店は間違いない

多くのステーキ屋が乱立する沖縄ですが、アメリカの占領下時代に「サインA」を認められたステーキ屋は数えるほどしかありません。サインAはアメリカ軍が「安心・安全食事が出来る店」にだけ与えられる称号のようなものです。

ただしサインAを認めてもらうためには厳しい基準をクリアしなければならず、それを獲得している店は時代が変わってもステーキ屋の名店として人気があります。現在でもサインAの店はありますが、どれも老舗ステーキ屋として連日客でいっぱいです。

ちなみに肉にうるさくステーキ屋もこだわりの店がある人が多い沖縄県民は、お酒の〆に老舗ステーキ屋でステーキを食べる習慣があります。「どんだけ肉好きよ!」と思うかもしれませんが、別の角度から見れば「お酒を飲んだ後でもペロリと食べることが出来るほどうまいステーキ=老舗のステーキ屋」ともいえるのではないでしょうか?